幻聴が聞こえたら

「インナーチャイルドとワンダーチャイルド」

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2005年5月5日
2009年1月24日 修正



はじめに

 先日、ジョン・ブラッドショー[著]新里里春[監訳]『インナーチャイルド ~本当のあなたを取り戻す方法~』(NHK出版)という本を読みました。この本は既に改訂版が出ていますが、私が読んだものは1993年に発行された初版になります。今回は、この本の内容について触れていきます。

 同書は、傷ついた心を回復させるための実践的なワークブックになっており、精神的に、より好ましい状態を目指す人にとっては、読む価値のある本であるように感じました。著者自身、自分の傷ついた心を治癒するための試行錯誤の時期を経験しており、同様の苦しみを抱えた人々を対象に、同じ目線の高さから、優しい気持ちで執筆されているようです。

 私自身は、最後まで読みましたが、余り、読み終えたという感覚はありません。それは、読み進める中で様々なワーク(手紙を書いたり、瞑想をしたり)をして来たのですが、今後もワークの必要性を感じており、私の中ではこの本の内容が継続しているという感覚だからです。本書におけるワークは繰り返し行う必要があり(後述します)、私にとっては、今後も手放せない一冊である、という事が云えます。

 同書における治療方法は、今まで心の奥に仕舞い込んできた過去の苦しい体験を、再体験していくことにより、少しづつ癒されていく、というものです。それでは、インナーチャイルドとは、具体的に、いかなるものなのでしょうか。

インナーチャイルドとは?

 インナーチャイルドとは、両親から精神的に自立する前に、不健全な家庭環境により傷つけられた、子どもの心なのだそうです。その様な、傷ついたインナーチャイルドを抱えたままの大人は、そのわだかまりがネガティブな影響を本人に与え続け、(神経症の原因となったりと)生活を汚染するとのことです。

インナーチャイルドが傷つく原因

 共生関係、犯罪行動、自己愛的障害、信頼問題、 行動化・内攻化、 魔術的な思いこみ、親交の機能障害,しつけられていない行動,中毒・強迫行動,思考歪曲,空虚(無気力、抑うつ)

 家族システムがが不完全だと、その家庭の子どもの心(インナーチャイルド)は傷つけられていくのだそうです。

 子育てとは、その子どもの一生をある程度決めててしまうくらい、とても大切なことです。しかし、親たちが、いくら一生懸命に子育てをしているつもりでも、本人たちのインナーチャイルドが傷付いたままであったなら、彼らの子どものインナーチャイルドが、同じ様な状態に陥る可能性があるということです。(子どものことを顧みない親であったなら、なおさらそうでしょう)つまり、子どもの心が健康的である為には、まず、親が健康的でなくてはならないのです。

 性的な虐待を受けた子どもが、大人になり、性犯罪者となる。それは、自分が受けた虐待を再現しているのだそうです。そして、第二次大戦中に、非常に残虐な罪を犯したヒトラーは、実は、子ども時代にサディスティックな父親により、中毒的に傷つけられていたのでした。この様な、負のスパイラルの実際を知ると、やりきれない気持ちになります。本人の力の及ばないところで、運命が決まってしまっている部分があるのですから。

 自分の心が傷ついているならば、それを直視しなければならないと思います。そして、より好ましい状態になるためには、どうすべきかを考えていくべきなのではないでしょうか。不条理な負のスパイラルは、それに気付いた本人のところで止めなくてはならない、私は、そう思うのです。

ワンダーチャイルドの特徴について

 
驚き、楽天性、純真さ、依存、情動、回復力、自由な遊び、独自性(唯一無二)、愛、など

 著者は、私たちの心は、本来的に驚きや好奇心に満ちあふれており、純真なのだと説きます。その天真爛漫な心を(インナーチャイルドに対して)ワンダーチャイルドといいます。それは私たちの成長に不可欠なものなのであり、詩人や芸術家、独創的な思想家が創作活動をするための原動力にもなっているのだそうです。そして、そのワンダーチャイルドが、機能不全に陥った家庭環境により、傷付けられることが問題なのであり、傷付いたインナーチャイルドを生む原因になっているとのことです。

 それでは、どのようにしたら、精神的な回復を得ることができるのでしょうか。著者は、オリジナルペイン・ワークを実践することにより、ワンダーチャイルドの心が取り戻せる、つまり、好ましい状態につながって行く、と主張しています。

オリジナルペイン・ワークとは?

 オリジナルペイン・ワークとは、“抑圧されている過去の辛い記憶を再体験する治療方法”です。それを再体験し、悲しむ(グリーフする)ことにより、感情のわだかまりが解きほぐされ、傷付いた心が、自然に癒されていくのだそうです。

 最初に行うオリジナル・ペインワークは、次の様なものです。

*質問項目による判定
*生育歴の調査
*乳児期を親友とシェアーリングする
*手紙を書く
*瞑想

 まず最初に、質問に「はい」か「いいえ」で答えることにより、自分の乳児期のインナーチャイルドがどの程度傷ついているか、その深さの程度を知ることができます。「はい」と答えた数が多いほど、乳児期の自己は、より傷付いているのだそうです。次に「生育歴の調査」があります。乳児期の自分がどのような子どもであったのか、両親に聞くなどして「家族システムのすべての情報を、できるだけ多く集めていく」作業をします。この作業は、子ども時代の事実関係をできるだけ正確に知るために必要です。ここまでは、正確にはオリジナルペイン・ワークではなく、ワークを始めるための作業になります。

 それが終わると、オリジナルペイン・ワークとして、乳児期を親友とシェアーリングする、乳児期の自分に手紙を書く、逆に、乳児期の自分から現在の自分に対して手紙を書く、瞑想をする、といったワークが始まりますが、その流れは、乳児期から、次に歩行期、学童前期、学童期と、過去から現在へ向かいます。

 それでは、中途ですが、今回はここまでの内容として、オリジナルペイン・ワークの詳細については、ぜひ同書を読まれる事をお勧めさせて頂きます。最後に、一つ書いておかなければならないことは、同書を一度読んだだけでは、オリジナルペイン・ワークの効果はほとんど期待できない、ということです。つまり、「継続は力なり」と言いますが、、効果を得るためには腰を据えて、長期間に渡り定期的にワークを繰り返して行く必要がある、という事です。それでは、今回は以上の内容になります。